「家に帰りたい」に何もできなかった—— 看護師歴12年目で在宅医療を選んだ理由

突然ですが、質問です。 大切な人が病院のベッドで「家に帰りたい」と言ったとき——

あなたはどう答えますか?

「病院の方が安心じゃないの?」「今の状態で帰れるの?」——そう思ってしまう方も多いかもしれません。

在宅医療を知る前の私も、まったく同じでした。 看護師であっても、知らなければ一家族です。


はじめまして

こんにちは。訪問診療同行看護師のヒマうさです。

看護師歴15年。病棟で12年、訪問看護師として1年、そして今は訪問診療専門クリニックで訪問診療同行看護師として3年目を迎えています。医師と一緒に毎日患者さんのお宅へ伺う日々です。在宅看護指導士の資格も取得しました。

このブログ「ヒマうさと学ぶ在宅医療」のコンセプトは、

「在宅という選択肢を、もっと身近に」

在宅医療は特別な人のためのものではありません。知っているかどうかで、選べるかどうかが変わる。そのための情報を、現場の視点からわかりやすくお届けしていきます。

今日は、私がこのブログを始めた原点をお話しします。


看護師になったわけ

私はおばあちゃんっ子でした。

小さい頃からおばあちゃんに「看護師になってほしい」と言われたのが、看護師を目指したきっかけです。

就職先の病院も、実はおばあちゃんのために選んでいました(笑)。「いざという時、そばにいられるように」——そんな気持ちがどこかにあったのだと思います。


そのおばあちゃんが、私の病棟に入院

おばあちゃんは長年、糖尿病を患っていました。最後の数年間は膵臓がんとも闘っていました。

そのおばあちゃんがとうとう動けなくなり入院したのが、私が働く病棟でした。

入院して間もない頃、おばあちゃんはこう言いました。

「家に帰りたい」

私は「そうだよね、帰りたいよね」と答えて、話を聞き続けました。

でも——それだけでした。


「家に帰りたい」に、できたのは聞くことだけだった

なぜ行動できなかったのか。今ならわかります。知らなかったから、です。

📋 当時の私が知らなかったこと

  • 訪問診療という制度があること(医師が定期的に自宅を訪問して診療してくれる)
  • どんな状態でも、退院に向けて一緒に動いてくれる病院の相談員(地域連携室)の存在
  • 「家に帰る」という選択肢を、患者さんに提案できるということ

地域連携室の存在は知っていました。でも当時の私には「転院の調整をする場所」というイメージが強く、在宅退院へ向けて動いてもらえるとは思っていなかった。病棟で12年働きながら、重症の患者さんを在宅退院へつなげた経験がほとんどなかったことも、その思い込みを強めていたと思います。

「在宅は元気な人が行くもの」——そう思い込んでいた私には、おばあちゃんの言葉を「行動」に変える発想そのものが、なかったのです。

おばあちゃんは、入院からわずか6日後に旅立ちました。


半年間の苦しさと、前を向いた日

亡くなってからの半年間は、目まぐるしかった。

悲しむ暇もないほど仕事に追われていました。ふとした瞬間に思い出しては、「あのとき何かできなかったか」と考える。でも答えは出ないまま、また忙しい日々に戻る——そんな繰り返しでした。

半年が経ったある日、気持ちがすこし変わりました。

「帰りたい」という言葉に応えるには、何が必要だったんだろう。

後悔じゃなく、疑問として考えられるようになっていた。「次に誰かが同じことを言ったとき、答えられる人間になりたい」という気持ちが、静かに生まれていました。


12年目の終わり頃、在宅医療を選ぶと決めた

「在宅医療を知りたい」——その気持ちが、転職への一歩になりました。

看護師12年目の終わり頃、転職を決意。まず訪問看護師として在宅の世界に飛び込みました。

実は当時の私の「在宅」へのイメージは「訪問看護かな」というほんの薄いもの。訪問診療という言葉すら、よく知らなかったのです。

それでも飛び込めたのは、「知ることで、誰かの選択肢を増やせるかもしれない」という気持ちがあったからだと思います。


訪問看護師を経て、訪問診療の世界へ

訪問看護師として1年が経つ頃、さらに深く在宅医療を知りたいと思うようになりました。

訪問看護の現場で、医師と連携しながら動く訪問診療という仕組みを間近で見るようになっていたからです。

そしてちょうどそのタイミングで、私が住む地域に初めての訪問診療専門クリニックが開院しました。これも何かの縁だと感じ、飛び込むことにしました。

今は訪問診療同行看護師として、医師と一緒に毎日患者さんのお宅へ伺っています。在宅看護指導士の資格も取得し、より深く在宅医療を学び続けています。


在宅に来て、わかったこと

知れば知るほど気づくことがあります。

あの時のおばあちゃんに、選択肢を提案できたかもしれないと。

💡 あの時の私が知っていれば、できたこと

  • 家族へ訪問診療という手段があることを伝える
  • 病院の地域連携室に「在宅に帰りたい」と一緒に相談する
  • 「どんな状態でも、家に帰れる可能性がある」という選択肢を示す

そして——もっと早く知っていれば、入院する前から在宅療養の環境を整えることができたかもしれない。訪問診療を早めに導入することで、住み慣れた家で過ごせる時間が、もっとあったかもしれない。

「家に帰りたい」は、叶えられない夢じゃなかった。知っていれば、選択肢になれたはずだったのです。

このブログを読んでいるあなたには、同じ思いをしてほしくない。だから私は、現場で見てきた知識と情報を、ここで発信し続けます。


「在宅」という選択肢を、あなたに届けたい

このブログのコンセプトは、「在宅という選択肢を、もっと身近に」です。

在宅医療を知っているかどうかで、家族の選択肢はまったく変わります。あの時の私がそうだったように、知らないだけで選べない人がまだたくさんいます。

このブログでは、こんな方に向けて情報を発信していきます:

  • 親の介護や在宅療養が不安な家族の方
  • 在宅医療に興味がある方
  • 訪問看護師・ケアマネさん
  • 病院から在宅への転職を考えている看護師さん

あの時の私みたいに途方に暮れている方が、このブログを読んで「在宅という選択肢があったんだ」と気づいてもらえたら——それがヒマうさの願いです。

一緒に、在宅を身近にしていきましょう。🌻

コメント

タイトルとURLをコピーしました